経営のへそ 2011年6月号

食分野のプレイヤーが増加中

今、食に対する期待からビジネス機会として捉えている方が増加している。これは以前からあった北海道民の食に対する思いに加えて、食糧自給率の低下、食や健康・エコに対する意識の変化、中国人口の増加により懸念されている食資源確保、担い手不足による構造の変化などが影響していると考えられる。一方で、北海道では以前からも農林水産資源を産業として活用していくべきだという議論は多くある。しかしながら実現には至らず、付加価値の少ない産業となっているのが現状である。このような経緯を考えると、これから食産業に携わる場合であっては、もうひと工夫した事業展開を行わなければ事業としての実りは訪れない。これらのことから今回のレポートでは、食を軸として事業機会を考えた際にどのようなキーワードがあるのか探ってみた。

これからの食のキーワード

①メガファームと6 次産業化

農林水産業では担い手不足の問題から農地の集約化が進み、また、近年では企業の農業進出から大規模な農場が増加している。これらはメガファームと呼ばれ、その場に足を踏み入れるとその規模の大きさに驚かされる。メガファームでは規模の経済が働きコスト的なメリットが考えられるが、既存の農林水産業の構造ではこのようなメリットを発揮しにくいのが現状である。農林水産業では生鮮食料であるが故に、収穫・物流・貯蔵も大規模・短期に行われる。このため業界の仕組みとして系列や組合が重要な役割を果たしている。ここに規模の経済を働かせて自農場だけを優遇処置してもらうのはなかなか難しいのが現状である。そのため、メガファームの事業展開では、直接販路を開拓する、商品開発を行う、フォームレストランを作るなどの“6次産業化”が検討される。6 次産業化とメガファームの相性はよく、大規模化によるコストメリットが6 次産業化により直接消費者に届けることができる。ただし、メガファームの量をさばく為には、2次・3次産業もそれなりの規模になるため注意が必要である。

②安近短と都市近郊農業

車で札幌から1 時間程度走ると様々な農林水産業に出会うことができる。消費者の余暇ニーズは数年前“ 安近短”と言われ、近くの農場で楽しみを作ることができれば地元民も含めた観光(余暇)需要を獲得することができる。札幌近郊にはファームレストランの成功事例も出来ており、結構な賑わいを見せている。観光というとアウトバウンド獲得やバス事業者を巻き込むと考えがちであるが、都市圏から地元需要というキーワードは成功すると根強く、かつ、都市の中心地に進出というステップも考えられる。

③知財や新技術

メガ化もできず、都市からも遠い場合は、知的財産(知財)や新技術の活用もキーワードとなる。食品業界は超競争市場であり、多くの商品が矢継ぎ早に発表される。特に流通市場にはナショナルブランドもあり、新規商品を作っても売り込むのはなかなか難しい。そのため差別化が重要となり、差別化のひとつとして機能性食品がある。また、グリーンハウス(植物工場)などの新技術がある。一般的な食品から脱却し、農林水産物の活用の方向性を医療や健康食品とすることで対象とするマーケットとは大きく変化する。特に健康食品市場や漢方薬市場は東アジア圏での成長も期待されている。

④ソーシャルメディアとコミュニティ

FaceBook やツイッターなどのソーシャルメディアは新しいコミュニティを作り上げることが簡単にできる。人脈を広げたいと思ったそのときに、スマートフォンがあればすぐに広げられる世の中になった。食産業においてもコミュニティ型のビジネスモデルがキーワードになりつつある。今までは農林漁業者は遠くの存在であり、かつ、ライフスタイルが天候に左右されてしまうため会いにくい存在でもあった。ソーシャルメディアにより生産者と消費者はクラウドの中で繋がり、場を共有することができる。

⑤クリエイティブ

食をクリエイティブな視点で捉えなおし、新たな価値を付ける取り組みが増えている。今までの食品のデザインとは一線を画したお土産やコンセプトは見た目にも楽しませてくれる。お土産用の商品などでは、什器やパッケージのデザインにより売れ行きが大きく変わる。見た目は前味(まえあじ)と呼ばれ、食品本体の味も左右するほど重要である。このようなクリエイティブな商品はコンセプト段階が重要である。食の商品開発では原材料や産地、レシピや作り方が先行しがちであるがここに最初の段階からクリエイティブな人材を含めてコンセプトを作るという視点も求められている。

行政による支援

前述のキーワードを盛り込みながらビジネスを展開する場合、そのビジネスプランに新規性や連携性などがあると行政による支援を申請することができる。代表的な3つの事業を挙げると次のような事業がある。

(1)北海道 農商工連携ファンド

農林漁業者と中小企業者の連携体が取組む北海道の農林水産資源を活用した新事業に対する助成を通じて、「食」「観光」「ものづくり」分野での新商品・新サービスの開発等の取組みを加速することを目的として創設されたファンド。食分野の場合、事業費等の 2/3以内で助成がある。ただし、限度額は200万円~ 500 万円/ 年。

(2)農林水産省 農業主導型施設整備事業

農業法人等が農業生産のみならず、加工・流通・販売など、農業サイド主導の経営の6次産業化に取り組む場合に必要な加工機械の導入や販売施設の整備等を支援する。

(3)農林水産省 農商工連携促進施設整備事業

農林漁業者と食品産業事業者が安定的な取引関係を確立し、地域の農林水産物を有効に活用した新商品等の事業化を促進するため、食品の加工・販売施設や農林漁業用機械施設の整備等を支援し、国産農林水産物の利用拡大や地域経済の活性化を図ることを目的とする。

上記(2)、(3)の事業は食産業で必要となる施設整備に関わる事業であり、それぞれの設備投資を考える際に活用することがお勧めである。

まとめとして「農商工連携」

食産業でプレイヤーが増加しているが、実際の事業展開では各プレイヤーが連携しながらそれぞれの強みや経営資源を活かし今回挙げたようなキーワードの取組が求められる。今の時代を勝ち抜くには、1 社単体での経営努力では困難である。同業種の組合ではしがらみがあり連携力が発揮できないという声も聞こえるが、異業種連携ではどうであろうか。特に農商工連携がうまく実現できると強みを発揮しやすい。北海道には多くの農林水産資源があることは間違いない。それぞれが強みを発揮しながら掛け算のように連携できる農商工連携による食に商機がある。

経営コンサルタント/中小企業診断士 石堂 修

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