経営のへそ 2011年3月号

従業員のアイディアや改善策を活かすために、提案制度を運用している企業がある。従業員は日々の仕事を“ より良く”、“ より効果的”にするため、それぞれの提案をレポートなどにまとめて提出する。集まった提案は委員会が取りまとめ、採否を決める。この制度を活性化させるために報奨金の支給や人事考課への配慮を行うこともある。このような提案制度は新しい仕組みではなく古くからある。実施している企業では重要な仕組みとして受け継がれ、提案を実務に活かすことができている。現在の市場環境では、新しい視点での工夫や改善が求められている。また、従業員のモチベーションを引き出し、実行力のある人材を育てることも求められている。これらの求めに対応する方法のひとつとして、提案制度も再度見直されている。しかし、提案制度はすぐに定着する仕組みではなく、運営を軌道に乗せるためにはコツがある。今回のレポートでは提案制度のメリットと運営のポイントについてお伝えする。

1. 提案制度のメリット

(1)自主性の尊重や一体感によるモチベーションの向上

従業員は日々の業務の中で気づいたこと、お客様からの意見・要望、取引先からの提案などを自由に経営層へ提案することができる。また、提案制度は全従業員が取り組むものであることから、会社としての一体感や規律を育むことができる。このように、提案制度は従業員の自己実現やチャレンジを支援し、同時にチームワークも強める。結果として、モチベーションの向上に役立っている。

(2)実行力のある人材の育成

提案された案件は、委員会などを通して評価し、採用・不採用を判断しなければならない。提案制度が定着している企業では、提案、評価、そして採否までをフィードバックする流れができている。この流れは、事業に必要な意思決定を組織的に行っていることになるため、提案者、委員会、経営層のスキルが磨かれる。提案されたことをどのように評価するのか、実現するためにはどうするか、自分の提案は採用されないのか理由や根拠は何か、このような問いにしっかりと答える取組みが実行力のある人材を育てる。

(3)企画や改善により変化する習慣

従業員は日々の業務を漫然と行うのではなく、企画や改善する案を探すことが求められる。“ 日々改善、日々成長”と言うのは簡単であるが、習慣化するのは難しい。提案制度を会社の仕組みとして取り組むことにより、全従業員はお客様や市場を見つめ、マンネリを打破するための提案を考えることとなる。

2. 提案制度を運営するポイント

(1)脱落ゼロ:全従業員が毎日の業務の中で実施できる仕組みとする。

全従業員が提案できるように、企画の提案だけではなく、業務改善も含めることが必要である。ここで言う改善とは、業務の整理ができていない状況下においては、業務マニュアルを1 ページ作成するなどである。このような改善のレベルは会社の現状に合わせて基準を設定しなければならず、これにより誰もが取り組めるようになる。誰かがやる制度にすると、形骸化していくのは目に見えているため、全従業員が取り組み実施できるようにすることが重要である。

(2)仕組み化:報奨制度や人事考課などにより会社の仕組みとする。

ある会社では、毎月2 件の提案を従業員に課し、提案1 件に対して無条件に500円の報奨金を支給している。また、優れた提案には社長賞として最大で5 万円を添えて報奨している。人事考課では、積極性や規律などの評価項目として提案制度を取り入れている。このような評価へ組み込むことにより、会社として重要な仕組みとして提案制度を位置づけていると示すことにもなる。

(3)意識統一:提案する視点や考え方を合わせる。

どのようなことが提案に値するのかを規定や事例を作り、考え方を統一する。前述の業務マニュアルの作成などは会社の考え方を明らかにしなければ業務改善に値するかどうか不明瞭になってしまう。また、自分の業務以外について指摘する場合も同様に方針を設けて、指摘する側は提案しやすく、指摘される側は受け入れやすくすることも重要である。なお、提案を実現する担当をどのように決定するかは方針として定めるべきである。提案を行った従業員が実現しなければならないという雰囲気がある場合、わざわざ提案を出したくないと考える恐れがある。このため、提案を行った社員は、アドバイザーとするが、提案を実現する担当には必ずしもなる必要はないことを明確にすることが必要である。

(4)埋没防止:委員会やプロジェクトを設けて抜けもれなく管理し実現する。

提案した内容は、検討状況、採用不採用の状況を含めて委員会により追跡管理することが必要である。業務に埋もれてしまうと、提案を出した従業員の努力や気持ちに応えることができずに逆効果となってしまうこともある。また、保留となっている場合はその理由を明確にして公開することも有益である。

(5)リーダーシップ:経営者や管理職は人材育成をしつつ、旗を振り、促進する。

経営者や管理職の役割として、それぞれの社員が自主性を発揮して提案に取り組むように支援することが必要である。例えば新入社員の場合、気づきを促し提案を一緒に組み立てることや、提案ではなく業務改善として整理整頓で効率化を図るといった視点の切り替えを促すことをしなければならない。また、旗振り役としては、随時盛り上げることが必要となる。

4. まとめとして

提案制度は、従業員の自主性を尊重しながら、経営層と現場が一体となり進められる仕組みである。毎日の業務にアンテナを張りながら企画や業務改善を発見するように努めている従業員と、漫然と仕事をしている従業員の差は大きい。また、自分の提案が採用されることは個人のやりがいと達成感にもつながる。この機会に会社の仕組みとして運用することを経営層へ提案したい。

経営コンサルタント/中小企業診断士 石堂 修

  • お問い合わせ
  • 無料ツール
  • 無料小冊子
  • 会社概要

PAGE TOP