経営のへそ 2010年12月号

1. 経営計画の基本形

デフレ経済が続く市場環境の中で、なかなか業績を改善できない企業が多い。このような中でも改善していくためには、経営者は組織のリーダーとしてしっかりとした目標を定めることが必要である。この目標を記述し伝えていくためのツールが経営計画であるが、作成者によって検討する項目が異なっているのが現状だ。そのため、必ずしも経営全体が網羅されているとは言えず、共通認識として利用できるとも言えない。また、財務会計の数字(売上や利益、キャッシュフロー)に偏り過ぎており、具体的に何を行うべきかということが抜けている計画も散見される。これは経営計画を立案する際に利用すべきツールが整備・利用されていなかったからと考えられる。今回は混沌としている経営計画の作成方法を整理し、組織で議論できるツールとして「戦略マップ」を紹介する。

2. 戦略マップで作る経営計画

「戦略マップ」とは、バランススコアカードという経営手法に含まれるツールのひとつである。このツールを使うことで、経営計画立案において検討が必要な事柄を4つの視点でバランスよく考えることができる。経営計画を立案する際に、何から考え始めればよいかという質問も多いが、まずは戦略マップの検討項目を基本として覚えてしまうとよいだろう。

●4つの視点とその繋がり
戦略マップでは次の表のように【財務】・【顧客】・【業務プロセス】・【学習と成長】の4つの視点を順に掘り下げて検討することで、それぞれの視点の目標を関連付けて整理していく方法を取る。

戦略マップ

各視点での検討項目

ここで重要なことは、掘り下げて考えた4つの視点の繋がりである。4つの視点はそれぞれが因果関係を持ち、上から順に掘り下げて考えていくことや、下から上へ繋げて考えていくことができなければならない。これは簡単に書くと、「業績を上げるためには、お客様に満足してもらわなければならず、お客様に満足してもらうためには、しっかりとした業務が組織として行われ、業務を行うための人材が揃っていなければならない」という繋がりを意味している。逆に下から考えると、「良い人材がいれば組織として良い業務ができ、良い仕事でお客様に満足して頂けるので売上が上がる。」という繋がりである。戦略マップではこの繋がりを意識して経営計画の方針やビジョンをより具体的にしていく。

3. 戦略マップの作成例

例えば、ある食品製造業では次のような戦略マップ(一部を抜粋)となった。

戦略マップの作成例

財務目標である「売上高10億円」を達成するためには、顧客の視点では、ターゲット層を「高級スーパーで買い物をする方」とした。この方たちから支持を得るには、「道産素材による安心・安全感にて差別化する」とし顧客目標とした。業務プロセスとしては、道産素材を使い食品を作る際に一定以上の品質で安定供給していくことが課題となるため、「安定供給できる生産者を支援・育成すること」を目標とした。そして、学習と成長の目標では、生産者を支援するために専門知識が必要となるため、今は個人の経験に頼っている作物に関する知識を「組織として活用できるように教育を行うこと」とした。さらに「作物の評価をデータベースとして蓄積すること」が必要であるとした。

このように戦略マップでは、単に目標を視点別に検討するだけではなく、財務の視点から顧客の視点へ、顧客の視点から業務プロセスの視点へ、業務プロセスの視点から学習と成長の視点へと掘り下げていくことが特長である。

4. まとめとして

戦略マップを活用することで、経営計画に盛り込まれる目標がどのように業績に繋がるのかが明確になる。戦略マップの作成に取り組まれた企業の反応としては、「顧客の視点は意識しているつもりであったが具体的に考えることができていなかった」「現在実施している施策と業績の繋がりが不十分であった」「人材が大事だと言っていたが計画的に育成はしていなかった」「多くの目標があったが関連付けて整理することができた」などがある。このような話を組織内で活発に行い、コミュニケーションをとることが経営改善の始まりとなる。参画型経営をしたいという経営者は、参画型で話を進める際のツールとして戦略マップを採用すると効果が出やすい。御社で取り組まれている経営施策や重点目標を4つの視点で整理するとどのようになるか一度試してみるとよいだろう。

経営コンサルタント/中小企業診断士 石堂 修

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