経営のへそ 2009年12月号

戦略思考 昨日の延長にこれからの売上はない

今の業績の先に未来の業績はない

人口減少社会に移り変わっており、徐々に市場が縮小すると言われて久しい。人口減少は人口ピラミッドの構成を逆三角形に変えるため、高齢化による負担はますます増加していくと予想される。これらのことは消費者支出に影響し、今まで以上に財布の紐は固くなっていくため、人口増加を前提にした企業経営では立ち行かないことを意味している。人口増加であれば市場は拡大するため、リーダー企業でなくとも売上を取れた。これからは市場が小さくなるためリーダー企業であっても売上が取れない。黙っていれば市場縮小にあわせて業績は落ちていく、ということを前提に考えなければいけない。

今日の成果だけを追及していないか

人口減少だけではなく、世界的な不況も重なり業績不振に陥っている企業が多い。しかし、業績を上げる為に“ 今日の成果”だけを追及しても簡単に業績は回復しない。業績を上げる特効薬はそれほど無く、ある程度じっくりと取り組まなければ回復していかないからだ。「そうは言っても、今月、今日の売上が見えないのにじっくりとは取り組めない。」とよく言われる。経営者がこのような考え方になってしまうと企業は衰退の道をたどることが多い。あくまでも企業戦略は“ 今日と明日のバランス”が必要であり、今だけを追及するのは危険だ。

明日の成果を得る為に今日何をするのか

3~5年先の中長期的な視点で業績を追求し企業経営を考えることを“ 戦略思考”と言う。昨日の延長にこれからの売上はなく、あくまでも明日のために仕事をしてきた積み重ねが3~5年後の業績を創る。明日の為の仕事とは、研究開発や顧客開拓、事業の開拓・開発、提携戦略、業務改善などを指し、中長期的な視点が必要となる。これらの仕事はすぐに成果に繋がることではなく、後から成果が付いてくるものである。そのため経営者が短期的な成果を追い求めると、新規事業の開拓など“ 手間がかかるがなかなか成果の出ない重要なこと”には取り組みにくくなる。このような事態を避けるため、“ 今日の仕事”と“ 明日のための取り組み”をバランスよく考えた行動、すなわち経営戦略が重要になる。

経営戦略設定の基本ステップは次のように行う。

  • ①自社のあるべき姿と課題の設定
  • ②経営資源(ヒト・モノ・カネ)の配分
  • ③達成するまでの時間と基準の設定

経営戦略の設定自体は特殊なことではないが、難しいのは②の経営資源の配分、③の時間と基準の設定を行い、具体的に組織に落とし込んでいくことである。

②の経営資源では、今の事業に配置されている人員を戦略で設定した新たな課題に配置することが必要となる。また、新たな課題を行うための資金も必要となる。当然、今までと業務の配分が変わるため、今までと同じだけの“ 今日の成果”は出せないこととなる。それでも今後の成長を見込んで戦略的に配置するのである。このとき低成長の分野から撤退する判断も重要であるが、ここも反発を受けやすい分野である。③の“ 目標とする時間”は、営んでいる事業によって大きく異なる。例えば薬やバイオ事業を営んでいる場合、研究開発には長い時間が必要となる。開発人員に与える時間とそこで使われる資金は数十年と言う長い時間が必要になる。比較的少ない時間ではあるが、サービス業などでサービス品質の向上に取り組む場合も調査やマニュアル作りなどで時間が投下される。このように投下された時間はすぐに業績に反映されないため、その進捗状況や達成できた状況を当初定めた基準で評価することが必要である。

3年後にどのような企業を目指しているか

全社員が会社の目指している姿を語れるようにすることが望ましい。会社の事業にとって重要な仕事が何か社員は認識しているだろうか。経営者は、人員配置や評価についても明確にしながら、はっきりとじっくりと戦略を伝え、明日の業績を作る仕事が実行しやすい環境を整える。現場の社員から「時間や資金もかかりますが長期的に取り組むので評価も考えて下さい。」という意見が上がってくることは望めないので、戦略作りは経営者の重要な仕事だ。戦略的な意思決定の重要さを今一度考えて、今日と明日の業績を手に入れて欲しい。

経営コンサルタント/中小企業診断士 石堂 修

社員の評価をする、その前に。

「彼は10 年目なんだが、何か物足りない」

人事のコンサルティングで評価を検討していく上で現状の個人別評価をヒアリングすることがあるのだが、その際にこのような感想をよく聞く。言葉は幾分オブラートに包んでいるが、もっと掘り下げて聞いてみると本音は「10 年いるけど、どうもパッとしない」ということである。

このような感想が出ることについて原因は何かを企業側の視点(つまり本人の能力不足等は問わない)だけで考えてみると大きくは次の3つとなる。

  • 原因1:採用時の見込み違い
  • 原因2:上司の指導力不足
  • 原因3:企業の決断力不足

原因1:採用時の見込み違い

企業内で採用基準をきちんと論じてこなかったため、採用時における「適性、資質」の判断が緩くなることから起きるケース。とにかく人数合わせで採用するとこういうことが起こる(この場合は採用ではなく補充という観点が強い)。そして「うちに優秀な人材はいない」と採用そのものに原因を求めるのではなく、全て社員に問題があるかのような認識になってしまう。

原因2:上司の指導力不足

上司の指導力だが、これが一番大きいのは間違いないだろう。新卒であれば少なくとも性格的なものを除いて仕事をする能力自体には大きな差がスタート時点ではない。つまり、最初の上司の指導如何で良くも悪くもなる。ただし、こういう重要な役割を担っているという自覚が欠如している上司が実際は非常に多く、往々にして自主的な「育ち」に任せられる(放置される)ことから「勘」のいい社員とそうではない社員との差がどんどん広がっていく。また、場合によって「勘」のいい社員は、指導力不足の上司、そしてそれを許容する企業に見切りをつけて去っていくこともある。

ちなみに、上司が指導を放棄する最たるフローはこうだ。

「自分のやり方で指導→なかなかそのやり方に馴染めない新人社員→何度か指導する→やはり改善されない→アイツはダメだというレッテル貼り→もういい・・・」。

自分の指導方法を変えられなかった上司にも非が少なからずあるのだが、そんな指導力不足は棚に上げ、「自分は悪くない、部下が全て悪い」としたい。企業として人材マネジメントが機能していない場合、やはり上司からの評価で判断してしまうケースが多いので、ついに「組織的」にも指導が行なわれなくなってしまう。一度レッテルの貼られた社員はそんな状況で何年も放っておかれる。

原因3:企業の決断力不足

適性がないということを伝えない、辞めてもらうことについて決断できないという企業側の大きな問題がある。

社員個人のこれからのキャリアを考えた場合、本人に適性がないと判断したのであればそのことを伝えるべきだ。何年も経ってからでは遅すぎる。これはキャリアというものについての考え方がなかなか企業に理解されていないことが引き起こす問題だろう。果たして給料を支払い、雇用を確保することが社員への「やさしさ」だろうか。仮に業績が急激に悪化してリストラせざる終えない状況になったとき、こういう社員はその対象となる可能性が高いのではないだろうか。自身のキャリアを考える機会もなく、気が付いたらリストラ対象。こういうのは「やさしさ」でも何でもない。

社員個々人の評価を論じる前に、「育ち」に関する組織的な取り組みが行なわれているかを確認する必要がある。

人事コンサルタント/社会保険労務士 佐藤 賢一

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