経営のへそ 2009年11月号

改善活動を阻む壁を壊せ

前回「山の頂で改革を叫ぶ」では、改善活動にはチェンジマネージャー、実務リーダー、調整リーダーの三人が必要だとお伝えした。今回は前回に続いて実際にリーダーを任命して、改善活動を行う際に立ちふさがる壁について考えていく。

【第一の壁】頑張らなくても売れた時代の人事

改善活動に三人の役割が必要となると、次に必要なのはリーダーの任命である。適任の者を探すことが意外と苦労する。これは適任者がいないという場合もあるが、適任者はいるが役職が適していないという場合が多い為だ。改善活動が必要な企業では、今までの人事が適切でなく、実力と役職が伴っていない場合がある。会社の歴史にもよるが、今までの成長路線の中、大きな苦労もしてこなかった幹部層や、社長の縁故者などが重要な役職に居座っていることも多い。このように実務能力に乏しい方が既存の組織の部長やマネージャーの場合、彼らは実務リーダーを担うことができない。一方で社内を見渡すと、30代や40代などのミドル層にやり手がいることもある。このミドル層に任せると色々とリーダーシップを発揮してくれるが、今度は「通常業務の流れと異なるので、上司や年長者などとの調整が難しい。」となる。これにはチェンジマネージャーとして、トップダウンも発揮しながら、実務リーダーが動きやすい環境を作ることが重要である。また同時に、調整リーダーには実務リーダーの意見や現場の意見、そして、幹部層の意見も聞きながら調整が必要な事項を報告させるのである。

【第二の壁】既存の業務で改善活動が進まない

実務リーダーや調整リーダーは改善活動という大きな仕事を任せられてやる気が十分である。しかし、リーダーを任命される人材は仕事ができるため既に多くの業務に携わっていることがほとんどである。このため、任命後には業務分担を話し合い、既存の業務と改善活動のバランスを取る事が必要となる。少なくとも既存と兼任で頑張ってくれというのは避けなければならない。既存の業務、改善業務が半々程度で業務ができるとベストだ。

ここでもトップダウンで任命した場合、既存の組織の長とはチェンジマネージャーが直接話し合いを持ち、業務分担と責任について話し合っておく必要があるだろう。

【第三の壁】俺たちの仕事は特殊だから。

自分の会社であっても全ての業務に精通しているという方は少ない。特に中小企業では柔軟に配置転換できるほど人材がいないことが多い。このため、自分が経験した部門はわかるが他はわからないというのが現状であろう。このような状況の中で実務リーダーはチェンジマネージャーの方針に則って改善していくことが求められる。当然、現場からは「俺たちの仕事は特殊だから」と暗に“口を出すな”というニュアンスの意見が出てくる。それも現場の長からこのような意見が出ることもあるのでたちが悪い。実務リーダーは、このような場面、どのように進めていけばよいだろうか。次のポイントがある。

  • データや数値など“客観的な事実”に基づいて議論する。
  • 顧客の立場、お客様の声に基づいて議論をする。
  • 自分の目で見てゼロベース(業務を1から組みなおす)で考える。
  • 改善会議を短い間隔で必ず設ける。(できれば毎週や隔週)
  • 会議の表と裏での立ち回りを意識する。
  • 仮説と検証を大事にする。(やってみなはれの文化)

このようなポイントを考えながら、できる限り現場の意見、現場の現実・事実に即した改善策を実行に移すことが必要である。実際には、飲食店の料理改善、アパレルのデザインなど専門性が高く自分の目で見てもわからないこともある。このような場合では、それぞれお客様の声を聴く場を設けて、その声をもとに改善を進める方法も検討に値する。

いずれの方法をとっても、完璧な改善活動はなく、継続的に検証し続けることが大切である。できるだけ速いスピードで改善結果を検証し、ダメであれば別の案で実施していくことが最重要なことである。

色々な壁が立ちふさがるからこそ、最終的に手に入れた結果は大きな成果となる。ぜひ、くじけずに挑戦して欲しい。

経営コンサルタント/中小企業診断士 石堂 修

「就業のあり方」を検討すべき時期にきている

未払残業が社会的な問題としてクローズアップされてから、中小企業においても残業代抑制のための賃金制度や内部の管理体制の変更、運用面では残業の承認制や許可制等を導入し、労働時間中心ではあるものの労務管理の見直しを図るところが増えた。企業成果と相関関係の低い「付き合い残業」や「なんとなく残業」といった非効率の文化にメスを入れたことは、契約概念が急速に浸透していっている雇用環境においても、年々増大するトラブル防止とリスク回避という観点からは大変好ましい傾向にある。しかし、その対応の多くは行政対策に基づく適正な時間管理の徹底や労使のトラブル対策のみを念頭に置いた「管理体制の変更」でしかない現実もある。極論、企業側のコスト抑制、リスク回避のみの視点で行なわれているに過ぎない。確かにそれで一定のリスクは防げるかもしれないが、何といっても後ろ向きなテーマである。

確かに労働時間についてのトラブルを問題の発端としているので、このようなリスク回避中心の対応になるのは自然の成り行きではあるものの、現在、中小企業における労務管理に求められているのは経営環境が変化したことで提供する商品やサービスが変わり、それに伴って社員の働き方も変えていかなければならないという発想の転換である。単に管理体制を変更するのではなく「就業のあり方」を人事という大きな経営課題として検討すべき時機にきているのではないだろうか。

法改正の内容にみる「就業のあり方」とは

また、経営環境のみならず社員の「就業意識」も「生活環境」も一昔前とは変化したという現状を理解することが「就業のあり方」を考える上では、今後特に重要となってくる。というのも、社会の流れは「ワークライフバランス」の実現に向けて徐々にではあるが、確実に進んでいる。まず、その実現に向けての法改正が目白押しで、今年は次世代育成支援推進法が改正されたし、来年は労働基準法、育児介護休業法も改正となる予定だ。

法改正の詳細については割愛するが、特に注目すべきは、「改正の目的」であり労基法においては、「長時間労働を抑制し、・・・仕事と生活の調和を図ること」とし、育介法においても「・・・男女ともに子育て等をしながら働き続けることができる雇用環境を整備すること」としており、それぞれの改正が導く方向性を確認することができる。

実際、これらの流れに対応するためには「就業のあり方の多様化」をいかに企業が受容できるかどうかである。金銭的報酬だけでは人を維持できなくなってきている中で組織力の源泉に繋がるのは「働きやすい環境」を提供できるかどうかだろう。現在のビジネス環境や社員が置かれている生活環境に可能な限り適合する「働きやすさ」、企業としては「就業のあり方」がますます問われてくるのではないだろうか。

分かっているようで分かっていない現場の状況

それでは今回のテーマである「就業のあり方」を検討するにあたって、具体的にまず何から手を付ければ良いのか。

それは別に難しいことではない。単に社内における業務フロー(現場)の現状を把握することである。

「そんなことはすでに分かっている」という言葉が返ってきそうだが、「分かっているようで分かっていない」のが実情だ。実際の人事コンサルティングの現場においても評価指標の設定を行うにあたって各部門ないし、各人の「役割」を聞いても明確な答えはほとんど返ってこない。また、返ってきたとしても経営者から確認していたことと現場で行われていること(認識を含め)の差が生じていたりさえする。

ビジネス環境とは外部要因を指すだけでなく、内部要因も含むものである。現状をきちんと把握せず、ただ世の流れに合せて変えてもそれは現場を混乱させるだけである。「変わる」ということでさえ大変な決断のいることだ。だからこそその「決断」を無にしないためにも、もう一度足元ではどういったことが起きているかを確認する必要があるのではないだろうか。

人事コンサルタント/社会保険労務士 佐藤 賢一

  • お問い合わせ
  • 無料ツール
  • 無料小冊子
  • 会社概要

PAGE TOP