経営のへそ 2009年10月号

山の頂きで改革を叫ぶ。

改革に必要な3つの役割

リーマンショック以降、改革の必要に迫られる企業が増加した。多くの企業で改革・改善活動が取り組まれているが、一方で、改善ができたという企業は少ない。経営者だけが組織の頂上で改革の必要性を叫んでいるようである。現場ではやまびこを返すように改善テーマを唱和しているが一向に効果が現われない。

経営者は、伝え方が足りないのか、危機感が足りないのかと考え、“口すっぱく”“何度も”言い聞かせる。それでも足りないと感じてポスターを貼る。しかし、色々と手を尽くすが「うちの社員は何度言ってもダメで・・・。」と嘆かれる経営者が多い。そして、経営者が嘆いているとき、現場からは「うちの経営陣は何を考えているんだ。」と逆の言い分が聞こえてくる。

そもそも改革や改善という活動に取り組むには、3つの役割を持つ人材が不可欠だ。

1人目は、チェンジマネージャー。2人目は、実務リーダー。3人目は調整リーダーの3人である。1人目のチェンジマネージャーは、全社的な改革の場合、経営者しかできない。チェンジマネージャーは、改革のアイディアを出したり、思い切りの良い判断をし、困難なことをやり遂げよう!と旗を振る役目を担う。また、リストラなど痛みを伴う改革には責任が取れる方の判断が不可欠である。

2人目の実務リーダーは、チェンジマネージャーの方針を現場に具体的に落とし込むことが重要や役割である。複雑に絡み合う問題を整理し、論理的に考えて現場のやり方を変え、方法を提示する。ときには一緒に行動し呼び水的な役割も担う。最後の調整リーダーは現場の声を吸い上げ調整する役割である。改革を推進するときには、“組織のしがらみ”や“業務の変化”から“不満”や“不安”が生じる。改革の担い手である経営者に面と向かって不満をぶつけることは難しく、イケイケドンドンの経営者に対してはなおさら言い難い。このような現場の声をよく聞き受け止め、経営層にフィードバックするのが調整リーダーの役割となる。

それぞれの役割に必要な能力と性格

  • ①チェンジマネージャー・・・リーダーシップ、決定力、アイディア、実行力
  • ②実務リーダー・・・論理力、総合判断力、構想力、問題解決力
  • ③調整リーダー・・・情報収集力、社交性、受容性、包容力、気遣い

※実務・調整リーダーは、組織人員数に応じて複数必要。必ずしも既存の部門長がリーダーとはならない。

経営者だけでは改革できない

全ての役割を経営者ひとりで担うことは不可能である。これに気づかずに改革だといい続けると改革は形骸化し、返って現場のやる気を削いでしまう。結果として改善する前よりも業績が悪化したという悲しい結果を招くので注意が必要だ。

チェンジマネージャーがリーダーシップを発揮しつつ、そこで出てくる不満も同時に吸い上げるという仕事は、小規模企業では可能であるがそれなりの人数になると困難になる。実務リーダーは、チェンジマネージャーと兼務できる可能性もあるが、“現場が活動できるまで具体化する論理力・問題解決力”は、アイディアを出す能力とは反対の能力である。このため、チェンジマネージャーと実務リーダーは別の人間が担う方が良い。また、実務リーダーと調整リーダーの性格も相反する。不満を言ってくれた社員に対して論理的に正論を返すと不満を増幅させる。ここでは相手の気持ちを察して受け容れる気遣いが必要なのである。このような役割を担う人が足りないことで改革が頓挫する場合が多い。「うちの社員は・・」と悲観する前に3つの役割を考えて、まずは協力者を上手く巻き込むことだ。協力者ができれば厳しい改革も案外スムーズに行き、経営者だけがひとり悩むことも少なくなることだろう。

経営コンサルタント/中小企業診断士 石堂 修

受け止め方の差がもたらすパワハラ問題。

手を打てないパワハラ問題

「これってパワハラじゃないだろうか?」 ― 最近、上司の指導に対して部下がその行為を「嫌がらせ、いじめ」と感じ、行政機関へ相談するケースが増えている。

「パワハラ(正式には「パワー・ハラスメント」)」という言葉の定義については諸説あるが、ハラスメントとは「嫌がらせ、いじめ」の意味でこれにパワーが付くこと、さらにその行為が職場で行われることで「上司という職場上の地位を利用した嫌がらせ、いじめ」などという意味で使われるのが一般的だ(なお、関連したものとして厚生労働省からは通達で「上司の「いじめ」による精神障害等の業務上外の認定について」というものが出ているのだが、これにおいても“「パワー・ハラスメント」は定義として確立したものはないことから~”とある)。

ただ、あくまで一般的な「言葉の概念」であって、実際にその範囲や度合いなどは個別ケースによりまちまちであるため、「どういった行為がパワハラとなるのか」は非常に「線引き」が難しい。さらにパワハラは、悪意なく行なわれていることもあるため、問題を複雑にする。そのため①部下への行過ぎた指導という場合のその「行過ぎ」という基準が設定困難であること、②上司によっては一指導としての認識しかないこと、③本当に部下本人を思っての行為である場合もあること、などから対応方法が定まらず、問題レベルの大きさは認識しているもののなかなか「手を打てずにいる」のが多くの企業の実態だ。

パワハラの対処には「部下の視点」で

パワハラの対処方法としては、いきなり問題の解決方法を探るよりもまずは問題へと発展する経緯なり環境なりを確認することからはじめる。具体的には上司の指導内容について行動事例を洗い出すことだ。

しかし確認については一工夫必要だ。単に上司の行動事例の洗い出しだけに留まらず、部下の視点での洗い出しも同時に必要となる。パワハラは、上司と部下、それぞれの受け止め方の「差」がもたらす問題でもあるのだ。この点を理解していないと、何でもかんでも部下からの訴えは「パワハラ」で片付けられ、指導する上司は萎縮し、本来行なうべき指導も出来なくなり、かえってそれが企業秩序の乱れにつながる恐れがあるからだ。

部下の視点での洗い出しには「記述式」と「パターン選択式」という2つを組み合わせた調査が有効だ。「記述式」は例えば“あなたがこれはパワハラだと感じている事項を書いて下さい”といった項目を設け、感じているありのままを記載させることで、調査に下手なフィルターを通さないことにより率直な実情を把握することに繋げる。次に「パターン選択式」は例えば“仕事に関係のない家族のことについてふれてくる”といった曖昧(パワハラとも取れるし、コミュニケーションの延長とも取れる)な設問をいくつか設け、パワハラと感じる、判断できない、違うと思う、という3択から選択させることにより部下の認識レベルがどういった程度のものかを把握することに繋げる。

問題の「線引き」が曖昧であるからこそ対処方法の判断がつかない場合には、このような調査結果を通じて上司、部下それぞれの認識について“確認”することがまずは解決のための大きな第一歩だ。

人事コンサルタント/社会保険労務士 佐藤 賢一

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